傷を愛せるか
「傷を愛せるか」という本を読んだ。
職場近くのTSUTAYAで、装画とタイトルが気になっていた本だ。
中身の情報を一切知らずに、ただただタイトルに惹かれて買った。
精神科医のエッセイ集で、著者がみた映画や、旅先での出来事から考えたことを中心に、カジュアルで読みやすい文で書かれている。
著者の所感が淡々と述べられているだけなので説法めいたこともなく、押し付けがましくない。
それでいて新たな視点を提示する文章が散りばめられており、全編通して読んでいて心地が良かった。
タイトルである「傷を愛せるか」
ここに強く惹かれたのは、自分が抱えてきた傷に対して「愛する」というアプローチを考えたことがなかったからだ。
生きてきた中でついた傷を、他の大勢の人々と同じく自分も持っていて、この数年間その傷との向き合い方を考え続けてきた。
認める
忘れる
癒やす
受け容れる
といったアプローチを何年もかけて繰り返してきた。
正直考え尽くしたつもりだったし、あがいたところで傷は傷として存在するのだという諦めの気持ちでいた。
そこに「愛せるか」という新たな問いを投げかけられた。
'愛する'とはただ受け入れることではないだろうし、癒やすとも違う。大切にし、尊重すること。守ること、好ましく思うこと、慈しむこと、
いろいろ思い浮かぶけれど、明確な答えはすぐには出せない。
ただ、ずっと繰り返し続けた傷との向き合い方に新しい選択肢が生まれたことはささやかな希望になっている。
今年は例年に比べてたくさん本を読んだが、この本がベストセラーかな。
長く手元において置きたい一冊になると思う。